こんにちは、自家製ギーク主婦ブロガーあさかわだです。前回から引き続き「醤油醸造にまつわる化学的な知識」シリーズのシェアです。
第2回は「麹室の中での麹菌の様子」です。
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何が起こっているのか分からない、見えない世界。
こちらの資料を中心に、勉強をしたことをまとめました。
知識を元に、麹菌たちの活動を想像します。「お・・・今、麹菌が菌糸伸ばしてるな・・・」と想像できると楽しいのですよ。
もくじ
麹室の中での麹菌の様子を知ろう【醤油製麹】
麹室に入るちょっと前、炊いた大豆と煎った小麦に種麹を合わせる「種切り」の作業から「出麹」までの間を見ていきます。
種切り
大豆に種麹菌を混ぜます。麹菌は大豆の栄養を摂取しながら発芽し始めます。
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麹菌は まだ赤子 雑菌の混入に注意!
盛り込み後 麹菌の様子
種切りが済んだ大豆(以下、麹)を容器に入れ、麹室で加温します。家庭だと、電気毛布やオーブンで温める工程です。
麹菌は発芽し、菌糸を伸ばしていきます。
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麹菌は大豆や小麦をエサにして、呼吸をして、成長して、増えます。目に見えないけれど、ちゃんと生き物なんですね。
分生子柄が伸びてくると、麹菌が白っぽくなってきます。
麹菌は 静かに成長中 雑菌から守ろう
麹菌の生育に適した温度
麹菌の発芽・増殖に適した温度は、35度が前後です。けれど、盛り込み直後の加温は庫内温度28度が目標です。
その理由はこちらです。
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麹菌よりも雑菌の勢いが強くなってしまうと、菌糸を伸ばす前に大豆が傷んでしまいます。
28度〜30度で麹菌が成長するのを待ちます。何も変化が無いように見えますが、根を張り枝を伸ばすように、生育しています。
麹菌が成長して雑菌よりも強い勢力をもてば、傷みの心配は減少します。また、呼吸熱で30度を超えてきます。それでも雑菌に負けません。
菌糸伸ばし中 雑菌に勝てるまで 30度以下
麹菌の生育に適した湿度
加湿した空気を当てる場合は、96〜98%と高い湿度が適しているとされています。
空気中に含まれる水分は、室温によって変わりますね。湿度100%の空気を当てたからと言って、庫内が湿度100%にはなるわけではありません。そして、理想の湿度はちょっと分からない。
こちらの動画では、麹室の温度30度・湿度65%の温湿度計が映っています。
ハッキリしないとは言え、高湿度が理想だと分かりました。以来、固く水を絞ったキッチンペーパーで保湿しています。
カビだから やっぱり しめったとこが好き?
1番手入れ頃 麹菌の様子
手入れをいつするかによって麹菌の様子も違います。私の1番手入れは、麹菌の発熱が始まるか始まらないかくらいです。
手入れは、麹の塊をほぐしてやる作業です。目的は次のとおりです。
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塊をほぐしてやることで、具体的に次の効果があります。
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下の写真は家庭で仕込んでいるとよく分かる、内部の湿気過多による塊化。下のほうは「息もできなかろう・・・(悲)」という窒息状態。大豆の盛り込みも厚いのでどうしても塊になります。
これをほぐして酸素を補給してやると、発熱し始めるというのが、私の製麹ではお決まりのパターンです。
参考資料には、手入れのタイミングはこの様に書かれていました。
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加えて、このタイミングが早すぎると、二番手入れ以降も品温が上昇していくと書かれています。逆に遅い手入れだと、乾燥が進んで菌糸が伸びにくくなるとのこと。
私の1番手入れは早いので、2番手入れ後も温度が下がらないのかもしれません。鍋やプラ容器は湿気が溜まるので、早期の手入れは仕方ないのです。
麹菌の熱を出し始める 麹室温を調整しよう
2番手入れ頃 麹菌の様子
1番手入れの後、麹菌の生育はさらに進み、一度下がった品温が再び上がります。温度が30度を超えたら、2度目の手入れを行います。1番手入れの後5〜6時間とされています。
その時は、次のような様子が確認できます。
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目には見えないけれど、麹菌の成長もステップアップし始めています。
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胞子が舞い、菌体がふえ、大豆全体が緑色の麹菌にまとわれていきます。増殖に伴ってプロテアーゼ等の酵素生産が旺盛になります。
醤油用麹菌(A.sojae)は、タンパク質を分解するプロテアーゼという酵素の生成に優れた菌です。その他にアミラーゼ・グルタミナーゼ等の酵素も生産されます。
品温を25〜28度と低めに保つことで、活性の高い麹を得られるとのことです。
活性が高いかは確かめようがありません。2番手入れ後に寒い場所で低温管理した麹が、1番ミッチリ麹菌がついたという経験はあります。要因が低温管理かどうかは不明。
麹菌 酵素生成 低温で
麹菌の生成する酵素について
麹菌は増殖の段階で、複数種の代謝物質を菌体内で生産します。その一部が体外に分泌される「酵素」です。
酵素はタンパク質の一種で、特定の物質の分解をします。生き物ではありません。
タンパク質を分解するプロテアーゼ。実は総称で、実際には多種のプロテアーゼが生産されています。
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同じくタンパク質を分解するグルタミナーゼ。こちらはグルタミンからグルタミン酸を生成します。グルタミンはタンパク質の一種で、グルタミン酸は旨味の元です。
デンプンを分解するアミラーゼも生成されていますが、デンプン分解酵素群のパワーは米麹を作る時に使うA.oryzaeほど強くないようです。
完成した麹と麹菌
晴れて完成した醤油麹はうぐいす色になりました。少し掘り起こすとブワっと粉が舞います。胞子です。
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これらが大豆と小麦と合わさっている状態になっています。
麹菌は塩水中では増殖が出来ません。麹と塩水を混ぜて諸味になったら、麹菌自体は数ヶ月で天命を全うします。
つまり、この製麹中にできた酵素がこの先の分解を担います。
※乳酸菌、酵母などは発酵後半で出てきます
麹室の中での微生物の様子 まとめ【醤油製麹】
麹室での麹菌の様子のまとめです。製麹の目的は、発酵に必要な活性の高い酵素を得ること。
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醤油づくりでは「1・麹 2・櫂 3・火入れ」と言われるくらい、製麹が肝に置かれています。
ですが、家庭に置いて醤油のクオリティを上げるなら「1・垽処理 2・火入れ 3・麹」だと思っています。今も。専門の道具がなく、難しい作業がポイントになります。
麹は放置気味で作ってきて、上質な麹を目指してきませんでした。簡単に出来ることが、継続には不可欠要素だったのです。
それでも出来上がった醤油は絶品だと感じています。
ちょっとお勉強をしたので、ようやっと麹と向き合えるなあというのが正直なところ。これから製麹にも気を配れるかな。
お礼とお願い
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
自分で勉強したことを、噛み砕いて文章にしました。省略もしています。
おかしい、間違っている部分にお気づきでしたら、コメントフォームでお知らせいただけると幸いです。勉強します。